【土田 研究醸造 DATA12】
【蔵元より】
米を溶かした旨い酒に挑戦
研究はうまくいかなかったけど
ただ ”うまい酒” ができました
『研究醸造 Data12 米を溶かす』
最初に言ってしまいますが
”米を溶かす”という研究は失敗しました。
ただ、うまい酒ができました。
『溶けづらい低精白米を極力溶かし、
米の味が出ている旨い酒にすることができるか』
研究醸造 Data12の研究テーマです。
蒸した米を麹の酵素で溶かし(糖化)
それを酵母が代謝しアルコールが生成(発酵)されます。
日本酒のつくり方をとても簡単にいうとこうなります。
近年の酒造りでは、 高精白米を使い、あまり溶かさず酒にすることが主流になっています。
雑味の少ないきれいな酒を造るための選択です。
わたしたちはこのような造りに少々違和感を感じていました。
『日本酒は米の酒と言いながら、米を半分以上削り半分しか溶かさず酒にしない。
米の酒と言うならば、なるべく精米せずできるかぎり米を溶かした酒にしたい。』
このような思いから、低精白米をもっと溶かせるようにしよう。と
今回の研究醸造12の計画が始まりました。
研究醸造 Data12では、
米を溶かし粕歩合10%台の旨い酒を目指しました。
粕歩合とは、原料に使った米に対する酒粕の割合で
米を100kg使って酒粕が30kg出れば粕歩合は30%となります。
一般的には25%から30%が多く、
大吟醸にもなると40%〜50%超といったものあります。
土田酒造の場合、令和2BYのシン・ツチダが25%くらいです。
目標 粕歩合10%台。
しかも溶けづらい低精白米、精米歩合90%での挑戦です。
結果、米を溶かすというテーマから見た研究醸造は失敗に終わりました。
狙い通りに米を溶かし切ることが出来なかったのです。
アルコール度数が予想以上に早くでてしまい
品温を上げることができず、溶かしきる前に搾ることを判断しました。
米は溶かしたいが、一番に優先するのは
出来上がりの酒の味わい。
粕歩合は最終的に39%と、目標値を大幅に上回ってしまいました。
研究結果についてのより詳しい解説は、YOUTUBE動画にて公開しています。
ぜひご視聴いただき、わたしたちの思いを感じていただければ幸いです。
生産者さんたちが、手間と愛情をたくさんかけて育てた米。
その米で私たちは酒を造っています。
食べて美味しい食用の米を、
できるだけ削らず、できるだけ酒にする。
その酒を飲んだ米の生産者の方が
『俺の米が、こんな旨い酒になった!』と喜んでいただけたら
こんなにうれしいことはありません。
今回の研究はうまくいきませんでしたが、
また次の造りからも、『米を溶かした旨い酒造り』への挑戦は続きます。
(失敗失敗といっていますが、できたお酒はとても美味しいです。)
DATA:
原料米:群馬県産 飯米
精米歩合:90% 仕込み水:武尊連峰伏流水(関東名水百選)
種麹:焼酎用黄麹
麹歩合:25%
酒母製法:生酛
酵母:無添加
アルコール度数:15%
グルコース:1.4
日本酒度:-11.4
酸度:3.2
アミノ酸:3.1
火入れ:1回
保管方法:常温可
720mlサイズ 1500本限定
土田酒造とは
土田酒造株式会社は、群馬県は川場村という人口3,400人の小さな村に拠点を構える酒蔵です。
創業は1907年、当主は現在6代目で、地元の方々からは誉国光(ほまれこっこう)という地酒の名で親しまれてきました。
私たちは関東で唯一、名誉賞を受賞した酒蔵でもあります。
名誉賞とは、戦前に行われていた日本酒の品評会(現在の新酒鑑評会にあたる賞)に連続で入賞した蔵だけに与えられる名誉ある賞です。
当時酒蔵数は今の倍以上ある中で、 その激戦を連続で勝ち抜いた蔵だけに贈られるこの受賞は、全国でも数蔵のみが成し得たという快挙でした。
それぞれの当主が 時代の中で、よりよい酒造りを目指し 先鋭的な取り組みで維持繁栄して参りました。
現在は、江戸時代に一般的であった生?(きもと)造りという、自然の乳酸菌という微生物を活用した酒造りを展開しています。
使用するお米も低精米且つ食用米へと広げており、材料は3つと空気のみ。
醸造用アルコールや、乳酸、酵素剤、水加工剤など日本の法律でラベル記載義務のない添加物も一切用いません。
米のうま味を引き出し、日本酒の多様性や複雑さを味わい楽しんでもらいたい。
土田酒造はこの技術を次世代へとつなげるべく、日々挑戦しています。
土田酒造は菌を活かした酒造り
我々の日本酒はすべて、 米、水、麹という3つの材料と菌のみで造ります。
蔵にすみついている乳酸菌や、色々な微生物の活動を待ち、促し、生かす生もと(きもと)造りという造り方をしています。
菌の力を引き出す技術を研鑽し、日々発見と学習を繰り返し味の違いや複雑さが楽しめるものの、一方で菌という生き物相手故に失敗とは常に隣合せの酒造り。
それでも近年は、山廃仕込みから生もと造りへとシフトし、また、米の味を引き出すため低精米且つ食用米での酒造りへとチャレンジを重ねています。
個性豊かで多様さ複雑さのある味を醸し出す;現代的な機械設備で江戸時代の製法を貫く酒造りです。
菌と人の協演にて、新しい味を醸し出す。
過去を少しだけ感じる、このうまさを全ての人に、この古くて新しい酒造技術を次世代へ。